わたしの幻聴幻覚
「わたしの幻聴幻覚」プロジェクト概要
「わたしの幻聴幻覚」プロジェクト概要
NPO法人シアターネットワークえひめは、2020年度より文化庁委託事業を受け、精神疾患による幻聴幻覚・妄想を聞き取り、 絵や言葉で表現した≪幻聴・幻覚カード≫や幻聴幻覚ワークショップや展示会、演劇公演を開催してきました。
2022年度より≪幻聴幻覚台本≫を使い、ワークショップ 会場にいる人たちとともに幻聴幻覚世界を知るための演劇的な手法を取り入れています。 また、市内の医療や福祉施設に赴いて幻聴幻覚をヒアリングし、美術館や絵画を得意とする精神障がい者が≪幻聴幻覚カード≫を作成することで、 幻聴幻覚のある人たちの人柄や日常の暮らしが少しずつ表現できるようになりました。
このプロジェクトの初期は、精神障がいのある人とアーティストが不安を抱きながら出会いました。そして、見学者を招くなど開かれた場に するためのストレスを感じながら事業を継続しています。 回数を重ねることで、互いが知り合い、障がいのある人、障がいのない人の枠組みを超えた対話が見えるようになりました。
世界中、同じ確率でこの病気の人たちが、生まれ、そして生きていく、その現実を知らない人たちにどう届けることができるでしょうか。 アートを介して「知ること」、それは全ての人が生きやすい、優しい世界「他人事にしない」社会のための活動です。
幻聴幻覚、そして妄想とは
ワークショップやヒアリング時の画像
わたしの幻聴幻覚プロジェクトのこれまで
2019年8月 風のねこ(就労継続B型)利用者同士で幻聴幻覚の聞き取りを始める。
2020年7月 文化庁委託事業障害者(等)による文化芸術活動推進事業開始
2021年1月 精神障がいのある人がアーティストに幻聴幻覚について説明
2021年3月31日 文化庁委託事業報告書作成 500部
2021年7月 ≪幻聴幻覚カード≫製作開始
2021年11月 幻聴幻覚ワークショップ開始
2022年3月 幻聴幻覚プロジェクト公開イベント
(カード展示、ワークショップ、ダンス・アニメーション・音楽体験)
2022年3月31日 文化庁委託事業報告書作成 1000部

2022年10月 ≪幻聴幻覚台本≫製作開始
2023年3月31日 文化庁委託事業報告書作成 1000部

2023年7月 シンポジウム「共に生きる社会って何?~表現やアートができること」開催
2024年3月31日 文化庁委託事業報告書作成 1000部

2024年8月 幻聴幻覚プロジェクト「この病気にならないと理解できないと思います。 どうせ、他人事でございましょう」公演 開催
2025年2月 研究者による座談会 松山×横浜交流プログラム(OUTBACKプロジェクトとの交流)in松山
この活動のきっかけと思い
2020年に文化庁委託事業」を開始した当初は、盲学校にアーティストを派遣する事業に取組み、翌年も特別支援学校にアーティストを派遣する計画でした。 コロナ禍で学校に入ることが難しくなり、文化庁委託事業の主軸を風のねこでの幻聴幻覚に関する取組みにシフトせざる得なくなった、というのが幻聴幻覚 プロジェクトの始まりです。
統合失調症の症状である幻聴幻覚・妄想を一般の人に知ってほしい、一方でそう簡単には分かってもらえるはずがない、特別な人と分断され、 さらに偏見が助長されるのではないか、当初はそんな心配がありました。
もしこの世界が、幻聴幻覚のある人の数が多数ならば、このような心配をする必要はなかったと思います。それは視覚や聴覚に不具合を抱えている人が 多数な場合と同様、社会は現在とは違った捉え方になっていたはずです。精神疾患・精神障がいのある人は、決して少数ではないけれど、その生きづらさを 伝えるエネルギーを持っている人は少数だと思います。
"コロナ禍" "文化庁委託事業"この二つが重なったことで偶然にスタートした幻聴幻覚プロジェクト。
「この病気にならないと理解できないと思います。どうせ、他人事でございましょう」展として知っていただく機会を設けられたのは、この報告書に登場 されている多くの人たちとの出会いと関わりのおかげです。
この事業を続けていると精神疾患・精神障がいのある人のその世界を、それを知らない人たちに届けることができるかもしれません。アートならではの突破力。 突破といっても、海と陸との境界にある渚のような、そのさざ波が少し見えてきたような気がします。
森本 しげみ(NPO法人シアターネットワークえひめ代表理事)